癌(がん)を始め、メジャーな疾病の新薬開発が「医食同源」思想に回帰。
食生活のなかから有用物質を探るようになっています。
赤ブドウ・レスベラトロールの特異な体細胞活性化能力を掘り下げた長寿研究が長寿ばかりでなく、癌(がん)、糖尿病、心臓血管病、脳視神経変性疾患など多岐にわたる疾病予防、治療に発展しています。
寿命に関わる染色体端子テロメアの切断を防ぐ酵素サーチュイン発見の鍵(かぎ)となった赤ブドウ・レスベラトロールの体細胞活性化(免疫力活性化)をヒントにした開発は非常に広い範囲の新薬を生み始めています。。
創薬よさらば、医食同源こんにちは‼
癌治療のモノクロール抗体(マブ:mab:monoclonal antibody)は赤ブドウをヒントにスタートした免疫力活性化の代表的なものです。
難点は投与対象が少ない(利益が出ない)オーファンドラッグ(指定難病患者専用薬)の製造や開発が後回しになることです。
1. 新薬開発の主流は「医食同源」への回帰 2千年以上の歴史を持つ「医食同源」思想。
先進諸国の経済成長期には抗生物質や化学合成医薬品の驚異的な薬効に押しまくられ、約半世紀で表舞台からは消え去ったかに見えていました。
「医食同源」思想には派手さがありません。
目立ちはしませんが、その思想は世界各国いたるところで生き続けています。
医薬品や類似品の過剰摂取による腎臓、肝臓へのダメージが顕著になるとともに、近年は新薬開発に「医食同源」思想が大きな影響を与えています。
新薬の主たるターゲットは人類の備えている自己免疫力の活性化。
ヒントは民族の伝統的、日常的な食生活。
まさに安全性を重視した疫学の成果から導かれる「医食同源」の世界への回帰です。2. ターゲットが絞られ熾烈となった新薬開発競争 最近10年は各国の新薬開発が行き詰まっています。
日本では新規開発を外国のベンチャーやビッグファーマ等が売り出す新製品の販売権獲得に頼ることが多いようで、当たり外れも目立ちます。
海外を含めても医薬品製造業には将来を期待できる企業が数えるほど。
収穫期に入った過去の開発商品を除くと話題も少なくなりました。
理由として考えられるのは開発のターゲットとなる身近な癌(がん)、神経変性疾患、心臓血管病など健康長寿を阻止する「難病の発現ルーツは同源」であることが、明らかになりつつあるからでしょう。
発現ルーツが同源では切り口に差別化が出来ず、開発競争は熾烈。
資金力豊富な大企業が有利になり格差が広がるばかり。
法令的に開発ターゲットを絞らざるを得ない現状はすでに時代遅れ。
安全性、有用性の確認方法は、治験も含めて世界的に見直す必要があるでしょう。
(注)COVID-19関連で膨大な利をあげた企業や、アジア諸国の観光客に人気の大衆的、日常的なOTC(薬局販売)、ジェネリック専門、風邪薬などの麻薬、覚せい剤成分製造企業はトレンド情報の対象にはなりませんので除外しています。3. 寿命決定遺伝子テロメアと細胞不死化酵素テロメラーゼ テロメアとテロメラーゼの発見が世界の創薬にこれまでにないインパクトを与えています。
テロメアは真核生物細胞内の染色体端部にひも状に付属します。
語源はギリシャ語で「端の部分」。
その役割は細胞分裂時の染色体内遺伝子転写を損傷から護ることと言われています。
人間の寿命がテロメア(telomere)の長さに関係するという研究が確立されたのは1980年代。古い話ではありません。
テロメアは遺伝子転写の度に損傷して短くなり、6-70回くらいで消滅。
これは細胞死を意味します。
ヒストン・アセチル化酵素が働くテロメアと後述のヒストン脱アセチル化酵素テロメラーゼをひとくくりに理解出来ないのはこれらが総称だからです。
テロメアの損傷メカニズムは不明部分も多いようですが、強い作用を持つ医薬品や、健康に有害と言われる紫外線、放射線、喫煙、農薬、殺虫剤、加工食品の発がん物質、などが主たる損傷原因と指摘されています。4. テロメア切断防止酵素サーチュイン(sirtuins)の発見 近年の医学、医療の進歩はめざましいですが、テロメア損傷メカニズム解明の1つの答えと言えるのはテロメア切断防止酵素サーチュイン(sirtuins)の発見でしょう。
寿命を左右する遺伝子のひも状染色体(テロメア紐)の保護膜を破壊し、その紐(ひも)を少しずつ短くする*寿命カット*に対して、カットを防ぐサーチュイン酵素(=ヒストン脱アセチル化酵素)の存在も発見されたことが現在の医薬品開発の方向性「難病発現のルーツは同源」を決めたと言っても過言でありません*サーチュイン=NAD+依存性ヒストン脱アセチル化酵素5. ハーバード大学のシンクレアー博士とバイオモル社のホーウィッツ博士 サーチュイン(sirtuins)は細胞内で活性化すると、その寿命を延ばすことも出来る酵素。
オーストラリアから米に移住したハンガリー系新進気鋭の分子細胞遺伝子学者シンクレア博士らにより発見されました。
サーチュイン(sirtuins)の由来はsilent mating type information regulation。
サーチュイン(sirtuins)はビタミン様補酵素 *NAD+と深い関連性を持つ、NAD+依存性ヒストン脱アセチル化酵素(NAD+-dependent deacetylases)のことです。
すでに7種類が発見されていますが、いくつかの種類のサーチュインはビタミンのNAD+を機能させている主要なタンパク質(酵素)であり、SIRT2(サーチュイン2)は長寿や代謝の酵素として生体恒常性(homeostasis)の維持、カロリー制限、血中脂質の減少、解糖、炎症の防止など様々な機能が知られています。
またSIRT6(サーチュイン6)は癌(がん)の制御に重要な関与をしている癌抑制因子ともいえます。
*NAD:ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(nicotinamide adenine dinucleotide)
栄養素からエネルギーを抽出するビタミン様補酵素 ビタミンB₃に誘導されます。 6. ガレンテ博士とシンクレア博士のサーチュイン生物学 ハーバード大学、*MITに招かれたシンクレア博士はMITのベテラン医学者ガレンテ博士(Leonard Guarente)らとサーチュイン生物学(sirtuin biology)を発展させサーチュインがNAD+やその前駆体に主要な働きをしていることを分子レベルで解明。
これを切り口とした長寿、がんの予防や治療の研究は次項のブラックバーン博士らよるテロメラーゼの発見で一気に進展してきました。
ガレンテ博士(Leonard Guarente)は1978年にハーバード大学を卒業。
栄養素からエネルギーを抽出するビタミン様補酵素の NAD+ (ナッドプラス)やその前駆体(precursors)をテーマに、エイジングに関わるサーチュイン生物学(sirtuin biology)の分子細胞遺伝子学研究を続けています。
NAD+合成系の老化関連疾患における病態生理学的意義を探るテーマはガレンテ博士らによる研究が進んでおり「*NMN,*NRに代表されるNAD+中間代謝産物は、NAD+合成系の促進,サーチュイン*の活性化を介して各臓器に作用し,老化関連疾患の病態を改善すると期待される」と延べています。
博士は下記のようにも述べています。
「驚いたことにサーチュイン研究は生化学の広い範囲に関連したことを研究していることとなり、全てに一つかそれ以上のサーチュインが関与しているのです。
サーチュインが体に必要な燃料量から(計算して)食べるべき食物の分量(カロリー)を決めているともいえます。
多すぎれば(余剰分は)エネルギー産出をせず、食物が適正量ならば、サーチュインはほとんどのエネルギー産出に関与します」
*Leonard Guarente:
Director of the Glenn Laboratory for the Science of Aging at MIT, Novartis
Professor of Biology*MIT:マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Ins
7. 細胞不死化酵素テロメラーゼの発見 1971年にテロメアの機能を確認していたロシアのオロフニコフ博士(Alexey Matveyevich Olovnikov)はテロメアの活性持続に影響を与える細胞不死化酵素(テロメラーゼ:telomerase)の存在を予言していました。
テロメア紐の保護膜を破壊し、それを短くする酵素に対して、当然のことながらそれを防ぐ酵素の存在があるという仮説です。
酵素存在の鍵をこじ開けたのはオーストリア人女性の*ブラックバーン博士遺伝子末端部のテロメアを活性化する酵素テロメラーゼを発見したことにより、2009年にノーベル医学生理学賞を受賞数々の難病の病理解明、医薬品開発に新しい潮流を作りました。
「テロメラーゼはレスベラトロール研究の土台」
ヒストンのアセチル化酵素(HAT)と脱アセチル化酵素(HDAC)とはhttps://botanicals.co.jp/library_view.php?library_num=156
*ブラックバーン博士(Elizabeth Helen Blackburn) (1948年生まれ:オーストリア)
カリフォルニア大学(サンフランシスコ校)勤務:メルボルン大学、ケンブリッジ大学卒8.細胞不死化酵素 テロメラーゼのコントロールで長寿と癌退治の両立 体細胞自然死を延ばす細胞不死化酵素(テロメラーゼ)は加齢により劣勢(弱体化)となる体細胞老化を防ぐ有益酵素。
「 細胞不死化酵素」は、細胞の自然死を防ぎ、長寿につながりますが、細胞が限りなく増殖を続ける癌(がん)細胞を自然死させたい癌治療には真逆な作用です 。
長寿と癌退治の両立は机上や動物実験までの理論であって現実的にはそんなに簡単なものではありませんでした。
ヒストン脱アセチル化酵素テロメラーゼとヒストン・アセチル化酵素サーチュインが干渉するテロメアをひとくくりに出来ないのはこれらが総称であり、細胞内における存在場所でもかなり異なる種類が存在します。
未知、既知を含めてたくさんの種類がありますから本来はその酵素の作用をアセチル化、脱アセチル化と一口で差別表現できないといえます。
作用する脱アセチル化酵素テロメラーゼがほとんど同じものでも、温度などの環境や、存在量の多寡、共働物質の存在などによって真逆の反応を起こすことがあるからです。
不思議なことに*ヒストン脱アセチル化酵素テロメラーゼの阻害は多少の差こそありますが長寿を促進するといわれる強精強壮健康食材の多くが持つ機能でもあります。
天然の脱アセチル化酵素ならば真逆の反応を示すケースがあると、その後立証されましたが、健康体には様々なアセチル化促進酵素と脱アセチル化促進酵素がほど良いバランスで体内合成されていると考えられています。
* DNA結合制御タンパク質とよばれる ヒストン(Histone) の化学反応(modification:化学修飾と訳されています)の代表的なものにはアセチル化、メチル化、リン酸化がありますが長寿と発癌抑制のターゲットとなっているのはアセチル化(histone acetylation)。
アセチル化は遺伝子変異の発現制御に密接にかかわっています。
ヒストンアセチル化酵素の一つであるサーチュインには幾つもの*タイプがありますがSir⒈タイプには細胞分裂時のテロメア―切断を防ぐ脱アセチル化の長寿作用と、癌を制御する脱アセチル化酵素阻害作用の(がん抑制酵素を活性化するSRT1720の共働を経由して)
相反する機能が同居することを説明した*米国厚生省傘下の「糖尿病、腎と消化器疾患研究所」の信頼すべき論文があります。
*National Institute of Diabetes, Digestive and Kidney Diseases,*National Institutes of Health*癌(がん)治療薬オブジーボ(ボリノスタット)のコンセプトは遺伝子転写に関わる細胞内タンパク質の状態を安定させる機能の応用。
ヒストン脱アセチル化酵素阻害作用と呼ばれ、食材が自然に持っている癌遺伝子抑制機能です。
注射薬の新抗がん剤アザシチジン(Azacitidine)に較べ経口投薬が出来る点、健康な細胞までを傷つけるCytotoxic 薬剤(遺伝子転写阻害)に較べ危険性が少ない機能が期待されています。
「新抗がん剤開発のヒントはブドウレスベラトロールの機能解明:
長寿の酵素が癌遺伝子発現と脳血管障害を制御」
https://botanicals.co.jp/library_view.php?library_num=404
9.Sir2を活性化させる*成分(スタック) シンクレアー博士とホーウィッツ博士らは、長寿や代謝の酵素として生体恒常性(homeostasis)の維持、カロリー制限、血中脂質の減少、解糖、炎症の防止など様々な機能を持つSir2(サーチュイン2)を活性化させる*成分(スタック)が、赤ワイン・ポリフェノール(天然ブドウレスベラトロール)に豊富に存在することを確認しています。
*スチルベン・ポリフェノール類などで組成される天然のブドウレスベラトロールはサーチュインを活性化する物質としてスタック* (STAC:Sirtuin-activating compounds)と呼ばれています。
その後研究者らはテロメラーゼの活性化に寄与するスタック(STACs)を4,000種類以上見出しています。
「サーチュイン活性化物質スタック(STAC s)の発見」
https://botanicals.co.jp/library_view.php?library_num=608
10. 医療新時代を開くNAD+.: NAD+がサーチュインとコラボレーション:
ワシントン大学の*サミュエル・クライン教授、*今井真一郎博士が「NAD+(ナッドプラス)合成系」ナイアシン(ビタミンB³)を応用した新規抗加齢療法の可能性を研究*サミュエル・クライン教授(Samuel Klein, MD)
Director, Center for Human NutritionChief,Division of Nutritional Science & Obesity Medicineワシントン大学栄養科学と肥満薬研究部門ディレクター)
*今井真一郎博士:ワシントン大学医学部発生生物学部・医学部慶應義塾大学医学部卒業後、ワシントン大学医学部内科で研究を続けています。
「今井真一郎博士らが長寿と癌(がん)研究に新たな潮流」
https://botanicals.co.jp/library_view.php?library_num=605
1. アンチエージングに関わるNAD+はナイアシン(Niacin:NAM)が前駆体
2. ニコチンアミドとニコチン酸はナイアシン(ビタミンB³ )のことです
3. NAD+ は栄養分をエネルギーに転換するばかりでない
4. ワシントン大学今井真一郎博士 らによる老化関連疾患に関わるNAD+ 合成系研究
5. NAD+ 、サーチュイン、 PARPs のコラボレーション
6. NAD+ とその代謝、信号伝達に関するカンファレンス
7. (参照)テロメア: telomere
8. (参照)テロメラーゼを活性化させる酵素のサーチュイン 11.危険な「NMNの点滴療法」
日本で自費診療のクリニックなどを中心にアンチエイジング療法として広がっている「NMNの点滴療法」は*NMNの血中濃度上昇により、*SARM1が過剰になりNADが破壊されていきます。
NADの破壊は脳視神経に異常を起こすことが知られています。
NMNは補酵素のナイアシン(ビタミンB³)類のことです。
ターゲットにニーズが無ければビタミンバランスが崩れるだけです。
体内生成や 食生活でビタミンB³不足が予想される方は50㎎くらいのマルチビタミンB経口剤を摂取することで目的は達せられるでしょう.
*SARM1: Sterile alpha and Toll/interleukin-1 receptor motif-containing 1 代謝センサーのSARM1は、NMN/NAD+比の増加によって活性化されます。