ケン幸田の世事・雑学閑談(千思万考)

第百四十六話:「百日紅・蛍袋・虎尾草」

2023/06/29
最終更新:2026-09-08
  
                                                                                   百日紅 神奈川県藤沢市鵠沼日本千思万考 「百日紅・蛍袋・虎尾草」 上田和男 夏に花をつける樹木は、案外少ないもので、その中でも赤い花を咲かせる木は限られ、サルスベリは、和名の猿滑ではなく「百日紅」と書くので、気になる木です。
他にも命名の妙とも言えるのが、草花の、トラの尾「虎尾草」とホタル袋「蛍袋」があり、いずれも耐寒性がある花を、軽井沢でよく見かけるので、此処に取り上げて見ました。

百日紅乙女の一身またたく間に    中村草田男掌に承けて虎尾の柔かき        富安風生宵月を蛍袋の花で指す        中村草田男 インド原産の落葉高木の百日紅は、7月から9月まで長い花どきを指して言い、白い花の「百日白」(しろばなサルスベリ)もあるそうですが、見かけたことはありません。
幹肌や枝肌がつるつるして、猿も滑り落ちるということが命名の由来だそうですが、実際は自由に昇り降りするようです。江戸時代初期に中国経由で観賞用として渡来し、寺社や武家、商家の庭木として植えられてきました。花以外にも、幹や枝の独特な姿かたちと、ちょっと変わった葉っぱの付き方も特徴があります。
枝に対して、互い違い(互生)や、二枚ペア(対生)で付いていることが多いのですが、時には左右交互に、右右・左左を繰り返し(葉序)付いていることもあり、その理由は良く解りません。

袖に置くや百日紅の花の露       安原貞室籠らばや百日紅の散る日まで      各務支考散れば咲き散れば咲きして百日紅   加賀千代女百日紅ややちりがての小町寺      与謝蕪村 さるすべり寺中おほかた見えにけり    炭太祇 梅雨明けの太陽を待ちかねたごとく山野に、真っ先に目にするのが白い花穂を付ける「虎の尾」で、直立した茎の頂に細かく密集して白色五弁の花被を調和よくのぞかせて、花穂の先が虎の尾のように見えるところから命名されたようです。
猫は勿論のこと、猫科の動物の尾の動きが、その精神状態を微妙に跳ねゐさせるので、その緩やかにカーブした形状を見せる野草の形態と符合する呼び名に、見事な和名の妙を感じます。

虎の尾の花や夕闇地より湧く     古谷実喜夫 蛍袋は、薄桃色の釣り鐘形の袋の中に本当にホタルが入ったら、どんなに美しかろうなどと、ついメルヘンチックな幻想を抱かせますが、命名者のセンスに心から驚嘆と敬意を表する次第です。
花の形状から、昔の呼び名は「火垂る袋」だったそうで、素直に名付けられた別名もあり、釣鐘草、提灯花、 風鈴草 などもあります。
咲く花はつりがね草か野中寺      椎本才麿