ケン幸田の世事・雑学閑談(千思万考)

第百三十話:「春を先取りする白魚漁」

2022/02/01
最終更新:2026-09-14


ご挨拶

オミクロンの感染力が強烈ですが、お変わりありませんか。お見舞い申し上げます。これまでのコロナウイルスに比べて、大抵は軽症化して風邪症状のようですので、それには、免疫力を高める食物で対策するのが良いそうです。抗ウイルス効果の高いニンニク、ネギを積極的に摂り、鼻や喉の粘膜を強める春菊、小松菜、ニラ、人参、カボチャの摂取がお勧めです。立春は、まじかに迫りましたが、まだまだ寒さが続き「春遠し」の感触ですが、既述の野菜群を美味しく頂く上で、併せて白魚でも食して「春近し」への気分転換をお図り下さい。(ケン幸田)

「春を先取りする白魚漁」

白魚は、英語で「アイス フィッシュ(氷状の魚)」というように、魚体は細長く、半透明の硬骨魚で、降海型(サケのように河湖で繁殖し海で生育するタイプ)と陸封型(マスのように一生を淡水で過ごすタイプ)の両方があり、昔は日本各地の河口や内湾に多く分布していましたが激減して、今は宍道湖が産地として有名です。早春、砂の多い河口域に遡上して産卵し、水温が十数度に上がると孵化しますが、寿命は約一年と儚い小魚です。白魚漁は早春の到来を告げる風物詩で、江戸時代には隅田川にも多く遡上する群れを、篝火を焚いて集魚し、四つ手網、刺し網や曳き網で漁獲したようです。

白魚をふるひ寄せたる四つ手かな      宝井其角
藻にすだく白魚や取らば消えぬべき     松尾芭蕉
白魚やさながら動く水の色         小西来山
浦安や春の遠さの白魚鍋          水原秋櫻子

白魚は春の季語ですが、冬景色の浦安で作句者は春を先取りする鍋を味わった訳でしょうが「春の遠さ」は晩冬に春を待つ強い気持ちを表したかったのでしょうか。日脚が伸び立春も近づく中、なお寒気厳しいながら、すぐそこまで来た春を待ちわびる季語「春近し」の気持ちを逆説的に強調して、春が遠い、との気分を表現されたようです.

白魚や清きにつけてなまぐさき       炭太祇
白魚や椀の中にも角田川          正岡子規
白魚汲乙女の白き膝の皿          中村草田男
くちびるの咲いて白魚吞まれけり      藤田湘子

白魚は生食する料理が多く、鮮度の良いものは、おどり食いすると、口の中で飛んだり跳ねたりして、珍味ですし、わさび醤油で食すのも、中々です。煮ると白くなり、味は淡白ですが吸い物にしたり、それほど上品ではないが、人参や椎茸のせん切りを煮た汁に、多量の白魚を投入すると、適当なぬめりが出て、絶妙の味わいが楽しめます。他にも天ぷらや卵とじ等にしても、おいしくいただけます。


余話ですが、白魚は半透明なので、葵の紋のような形の脳が透けて見え、その為昔は、徳川家の家紋のある魚として尊ばれ、江戸佃島の漁師が毎年獲って幕府へ献じたと言われています。白魚〈シラウオ〉に似た、素魚(シロウオ、別名イサザ)というハゼ科の半透明の小魚もあり、よく間違えられますが、此方は黄色味を帯び、浮き袋が透けて見え、胸に吸盤があるので見分けることが出来ます。