第百二十六話:「日本人は月を愛でる」
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「月は隈なきを見るものかは」と「徒然草」に書き残したのは兼好法師で、晴れれば隈無き月を愛で、曇れば月に叢雲の風情に感じ入り、翌日は少し遅れる十六夜の月を待ちと、夜空の名月ばかりではなく、人口池泉に舟を浮かべ、水面に映り揺らぐ月をも愛でた嵯峨天皇や醍醐天皇の観月遊びのように、二つの月を愛でる月見行事は、日本古来の伝統的風習となっています。 名月や池をめぐりて夜もすがら 松尾芭蕉 平安時代に行われた「月の宴」は、詩歌や管弦を伴った優雅なものだったようで、全国多くの神社の行事に引き継がれておりますが、中でも下鴨神社の「名月管絃祭」は其れを彷彿とさせてくれます。例年、中秋の名月の日、拝殿には月の出る東へ向かって、芒やお神酒、秋の収穫物が供えられます。境内には篝火が炊かれて、雅楽や舞楽が奉納されて、幽玄の世界に浸ることができるひと時は、現世を忘れさせてくれます。「海ならず湛える水の底までも清き心は月ぞ照らさむ」と月に寄せる思いを詠った菅原道真を祀る北野天満宮の「明月祭」も厳粛な神事を斎行します。お供えの中央は月見団子ですが、その両側に、里芋の上に芋茎を束ねたものが屹立するユニークな姿のしつらえです。 名月をとってくれろと泣く子かな 小林一茶 月の満ち欠けは、新月(朔)、上弦(弓張月)、満月(望月)、下弦(二十三夜)、新月と巡り、その周期を基本としたのが太陰暦(旧暦)で、現代人にもなじみの中秋の名月(旧暦八月十五日・新暦で今年は九月二十一日)の十五夜のみならず、江戸時代の人々は、月の運行に連れ,毎夜姿を変える月の出を待つのを楽しんだようです。月見にまつわる言葉は多く、三日月、十三夜(後の月、栗名月、豆名月)、十四夜(宵待月、小望月)、十五夜(良夜、芋名月)、十六夜(いざよい月、ためらい月)、十七夜(立待月)、十八夜(居待月)、十九夜(寝待月、臥待月)、二十夜(更待月)、二十六夜待ち、などがあります。 三日月や地は朧なる蕎麦畠 松尾芭蕉 |
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