しらす・さぶろうの日本人がんばれ!! 

百年前の欧米「女尊男卑」社会
視察者が覗いた女性上位社会の深層

2021/02/15
最終更新:2026-09-08
 
ニューヨーク・マンハッタンの雑踏(1927年) 

東京オリンピック組織委員会森元会長が辞任する原因となった「女性蔑視」。
海外からもマスメディアを筆頭に、スポンサー会社、スポーツ界などから直接、間接に非難が殺到しましたが、森元会長の誤算は、この海外からの抗議。
「女性蔑視」に的を絞って激しく批判、抗議する声は、国内からより過激で激しく、質が異なったこと。
海外取引先に急かされたのか、大スポンサーのトヨタなど国際企業も遅ればせの猛抗議。

近年まで「男尊女卑」の男上位社会が続いていた日本と、起源が定かではないほど古くから「女性上位」の欧米や、その植民地だったアジア諸国では、「女性蔑視」の受け取り方が大きく異なるのは当然といえます。
 日本での非難の多くは、テーマの「女性蔑視」より、それを機に国民が感じた森元会長個人に対する好感度や肌合いが大きいのかもしれませんがなだれ込んだ海外からの指摘は、純粋に元会長の、世界から数十年以上遅れている(と言われる)女性観に絞られています。
森氏の公的発言が「女性上位」の国には許せなかったのかもしれません。
                  
欧米飛脚                 マジェスティック号欧米の「女尊男卑」に関して、愉快な小冊子があります。
昭和初期に欧米を歴訪したビジネスマン*木村森蔵氏の視察報告会記録ですが題して「欧米飛脚」。

視察先はヨーロッパ大戦争(第一次世界大戦)の戦勝に沸く、世界最先端の工業国アメリカを筆頭にイギリス、フランス、ドイツ、ロシア。
永い鎖国後の文明開化から半世紀。どの程度諸外国の文明レベルに達したか。

                             米国大陸横断大型自動車「欧米飛脚」には機械、エネルギー、自動車、鉄道、文化、移民など幅広い情報が盛り込まれています。
報告会の聴衆は軍関係(職業軍人)ですから、仮想敵国偵察報告会かもしれません。
 その中に女性の地位に関する興味深い記述があります。
米英とフランスでは女性上位社会を強く感じたようで、その起源や深層を様々に推測していることがうかがえます。
木村氏のアメリカへの渡航は当時としては最先端の客船マジェスティック号。
シアトルからは大陸横断鉄道でニューヨーク市を訪れています。


ニューヨークのマンハッタンでは活動写真(映画)が大盛況で2-3千人が入る大劇場が連日満員だったそうですが、同じく活況を呈していたのが寄席(よせ)。
筆者が寄席と呼ぶのはジャズなどの生演奏と、女性踊り子(ダンサー)や寸劇を見世物にする小さな酒場。
そこで上演される寸劇のテーマで多かったのが「女性虐め」。
若い男が女性にキスを度々求めるも決して許されないことに腹を立て罵倒、殴打を気絶するまで続ける残酷な脚本に大変驚かれたようです。
 当時の日本では英米仏を「女尊男卑の国」と呼んでいたようですが、筆者は寄席で上演される真逆のシナリオに接し、女性上位社会へ欧米人男性が心底に持つ抵抗、鬱憤晴らし(うっぷんばらし)を感じたようです。

文中では「女があまりに威張るから」と表現していますが、度々、女性を「女」と書いており、日本人男性が女性を下に見ている時代であることがわかります。

筆者は大西洋を渡った英国、フランスでも同様なシナリオの寸劇を観たようですが、両国は戦勝国とはいえ経済が疲弊しており、遠く離れた米国とは事情が異なったようです。
両国で知ったのは国家が売春を密かに奨励し、高額な課税をしている(らしい)悲しい現実。
女性上位の現状は、膨大な戦費と米国からの借金返済に対する女性の大なる貢献度によるものであり、男性が外貨を稼ぐ女性に心から感謝しているから、だろうと推測したようです。
 戦死による男性人口減少や女性の就職難などによる女性過多でピカデリー・サーカスやパリ中心部にあふれる女性。
あまりの多さに、「人種的に風儀を乱す類」なのかとの印象もあったようですが国がその収入に頼っていた国策状態を知り、無知を恥じたようです。

特に第一次世界大戦で主戦場となったフランスは、英国が米国からの借金を返済しているにかかわらす、終戦から10年以上経過した時期にも全く返せない状況であることから、女性に対する感謝を感じたようです。
 現在では知る術もなく想像になりますが、女性上位への恨みと、反撃が許されない米国社会での寸劇シナリオと、女性への感謝(レスペクト)が心底にある英仏ではシナリオの残酷度が異なっていたのではないでしょうか。
 いずれにせよ白紙状態で観察した筆者の第一印象はとても興味深いものです。
短期間に全体像のわずかな部分を垣間見ただけにかかわらず、視察記に記載された予言が後世に現実になったことが少なくありません。

*木村森蔵:大同電力會社大阪支店長。 大同電力は関西電力、東京電力など日本の電力配給会社のルーツともなった国策電力會社。
著者が訪れたのは昭和2年(1927年)の夏。 期間は当時の視察としては短い半年間。
帰国はシベリア鉄道経由。
 (あとがき)
日本では女性は家事、育児が天命であり、学問は不要という時代が続きました。
女性の仕事が限定的な社会が永年続いていましたから、多くの女性には欧米とは異なるエピジェネティクスがあるでしょう。
女性が活躍する環境づくりには学校教育を根本的に変える必要があります。
 一時期は世界トップクラスの経済規模を自負した日本ですが、この半世紀に様々な分野で、欧米先進国ばかりでなく、女性力が大きい新興国にも大きく差をつけられています。
再び肩を並べるには、失った半世紀を上回る時間が必要かも知れませんが、女性力、女性の表舞台での活躍が欠かせないでしょう。