なぜ今の時期にレリースされたのかは憶測が飛び交っていますが、先進、先行するドイツのキュアバック社や米国のモデルナ社、イノビオ社にビオンテック社が追いついていることを示したかったのか、アメリカファーストのトランプ大統領への当てつけか、噂話がささやかれています。
一つ言えることは従来のワクチン製造で最大手のファイザー社にはプライドがあり、未熟なレリースはワクチン開発、製造の難しさを知る多くのベテラン幹部の本意ではなかっただろうことです。
ファイザー社はFDAが時期尚早と制止するのを無視してニュース・レリースを各国に流しましたが「中間解析で明るい結果が出ている」という報告であり、「Sirs-CoV2ワクチン開発に成功」ではありません。
ところがCOVID-19は各国の経済が崩壊しかねない勢いで拡大が続き、制御に術(すべ)がないお手上げ状態。
メディアのセンセーショナルな報道は少しでも明るいニュースが欲しい人々への過剰サービスかもしれません。
レリースの「治験では予期せぬ90%以上の抑止力効果が見られた」の「90%以上」という数字が独り歩きしています。
この数字は一見、統計学でいう「サンプル抽出統計」に似ていますが、だれにもわかりにくい未熟なものです。
レリースをよく読めば成功を断定する言葉は入っておらず「成功する兆しが見えた」という程度の内容です。
来るべきハードルを予見させる負の部分も(小さく)示唆しながらレリースしていますがマスメディアは「ワクチン開発に成功」「90%以上」とシンプルに報道。
まだまだ問題の多い点は意図的に何も報道しませんでしたから、ニュースは世界を駆け回り、歓喜の嵐を巻き起こしました。
日本では政府を筆頭に東京オリンピック関係者や、大きな被害を受けている陸海空の運輸業、ホテル、飲食業、お土産製造販売など観光業関係者などが欣喜雀躍(きんきじゃくやく)。
不安を少しでも和らげようとしているのでしょうが、罪作りな話です。4. ニューズレリースに疑念を抱いた感染症の権威ピーター・ホテス博士ハドソン川を眺めてリモート乾杯のロマンチックな報道に「行く先のハードルは高く、シャンパン・トーストはまだ早い」
「今の段階では、私はシャンパンのコルクはそのまま、抜栓はしない」と異論を唱えたのが、ベイラー医科大学(Baylor College of Medicine)のピーター・ホテス博士(Peter Hotez)。
イェール大学(Yale University)、ロックフェラー大学で学位を取った熱帯感染症やワクチンの権威であり、Sirs-CoV2ワクチン開発を目的とする有識者会議のメンバーです。
「企業のニュースレリースにはいつもながら肝心なデータが無く、茶葉(真相、心髄)を見つけることができない」とロマンチックな表現でお返し。
(It's always hard to read the tea leaves of a company press release)
「肝心なのは誘発された抗体がSirs-CoV2ワクチンに対しどのくらい免疫効能が続くのかであり、それがわからない(この難敵は免疫の攻撃をかわす豹変度が非常に大きいそうです)」
数少ない治験程度でなく、広い範囲で使用された場合に新ワクチンが「感染率が低くなるのか?」、「感染を防ぐのか?」も不明「新ワクチンが審査で承認されても、多くの人が恩恵を受けるのは、まだまだ先。
(-7~80℃)のコールドサプライチェーンすら整備されていない」
「感染しやすいといわれる高齢者に対する効能が不明」
「治験方法を公開すべき」:ビッグファーマは治験方法を各自が独自の方法で行うといわれます。
ピーター・ホテス博士はインタビューで、このような指摘をしていますがこれにはFDAの元主任研究員でジョージタウン大学のグッドマン博士(Jesse Goodman)が大賛成。5. ホテス博士が警戒するSirs-CoV2事態の長期化(years and years) と軽症若者の感染後遺症公衆衛生学、感染症の権威としてマスコミで語るホテス博士は「Sirs-CoV2から若者を隔離すべき」
「このウィルスはこれまでにない難敵。若者は発症が軽くても将来にその感染が重大な結果となる可能性がある」
同時に「米国はワクチンが普及した後にも、途方もない長年間(years and years)このウィルスの影響から逃れることができないだろう。それくらい今起きていることは重大事」と警告しています。
(the US can expect to be affected by coronavirus for 「years and years」)6. すでに始まっている後遺症との戦いご存じのように欧米の感染者増は目を覆う惨状。
ウィルスや治療医薬品による傷は腎臓、肝臓、骨髄、脳視神経など広範囲に及び、60%を超える確率で後遺症の発症が危惧されていますが、体感の早い脳視神経異常や味覚喪失、脱毛を訴える人が急増しています。
重症患者で救命された方は、腎臓、肝臓へのダメージを訴える人がほとんど。
Sirs-CoV2ワクチンが広く出回るのはまだ1年以上かかります。
これまでの5,000万人を超える感染者と、その数を上回るだろう無症状感染者には後遺症発症の可能性がありますが、今後の感染者数が加われば、その総数は途方もない大きな数字となるでしょう。
見切り発車するSirs-CoV2ワクチンの安全性がインフルエンザワクチン並みなら成功と言えますが、それは億人単位の接種が済んだ後、何年か経過しなければわかりません。
後遺症にワクチン被害が加わらないように、開発関係者は苦戦しています。(参照) 7. ビオンテックの新コロナワクチン開発癌の治療にmRNA ワクチンを応用する研究をしていたベンチャーのビオンテック(BioNTech)社はファイザー社とSirs-CoV2ワクチン開発を目的として提携しましたが、CEOのサフィン(Ugur Sahin)氏は開発の成果について第8項のように述べています。
(ビオンテックに関するノギボタニカル・ロハスケの記事) https://botanicals.co.jp/library_view.php?library_num=677 「トランプ大統領が招集したCOVID-19緊急ワクチン会議キュアバック、ビオンテック、モデルナ、イノビオ、ジオヴァクス」
2020/03/128. ビオンテック社CEOのサフィン(Ugur Sahin)氏が開発経緯の解説「研究では人間の細胞に取り付いたSirs-CoV2の細胞膜表面たんぱく質(スパイク)の20以上の異なった部分をテストしました。 結果、多くのメッセンジャーリボ核酸(mRNA)が免疫の*樹状細胞(dendritic cells)上に取り付いて抗体を発生させていることを発見。
発生抗体の影響を受けたT細胞(胸腺の免疫細胞)が活性化してウィルスを攻撃していたことも確認。
その樹状細胞にワクチンを働かせる機能解明には長期間を要しましたが、(初期の実験では)mRNAが最も有用なことを知りました。それが我々の研究が差別化される要因(key differentiator)でしょう」
樹状細胞はこの対応で体細胞に高頻度変異(Somatic hypermutation)を起こさせることが知られており、この働きが適応(adaptive)という言葉の元となっています。
免疫理論の研究は日本も進んでおり、1987年のノーベル医学生理学賞は利根川進博士(当時48才)が抗体の多様性、免疫遺伝子に関する研究で受賞。
残念ながら日本人の有力研究者の多くは米国で研究をしており、京大からカリフォルニア大学サンディエゴ校に進学し、現在はマサチューセッツ工科大学教授としてピカワ研究室室長(Picower Institute)。すでに半世紀を超えて米国在を続けています。11. ファイザー社のニューズレリースに関係者のコメントNIH*の生命倫理学者(bioethicist)グラディー(Christine Grady)さんは「ニュースレリースの根拠となったデータはごくわずか。
FDA認可を得るためには、これから治験参加者数万人の抗体持続性、安全性、情報収集をしていくのだろうが、プラセボ(placebo)を使用させられていたことが判明した治験参加者がアンケートなど情報収集に協力してくれるのか心配、倫理的には強制できない」と話しています。
* NIH: the U.S. National Institutes of Healthフレッド・ハッチンソン癌研究所のワクチン研究者コーレイ博士(Lawrence Corey)は「いくつかの新ワクチン候補を試してみましたが、驚くべきワクチン開発技術の進歩で、離れ業ともいえる偉業を達成している新ワクチンがいくつかあり、科学がウィルスの秘密の暗闇を切り開いた」と驚きを隠せません。