ケン幸田の世事・雑学閑談(千思万考)

第九十七話:「年神様と門松。序でに、寄生木の話」

2019/01/01
最終更新:2026-09-08
日本の正月は、本来年神様を迎え入れる行事で、年神というのは「歳徳神」のことで陰陽道では、その年度の福徳を司るとされているため、人々は年の初めに何としてもこれを招き入れようとしたようです。各家でこの神を迎えて祭りを行うために選ばれたのが「年男」で、家長または長男がこれを務めました。

年神にお任せ申す五体かな 小林一茶年神にたるの口ぬく小槌かな 宝井其角真白にかしらの花や年男 森川許六 古来、年神様は常緑樹に宿るとされており、その神様をお迎えする為に各家の門口に「依り代」(年神様の降臨する際の目印)として松飾りや竹飾りを立てたものが「門松」で、この習慣は平安末期に始まったようです。

門松やおもへば一夜三十年 松尾芭蕉月雪のためにもしたし門の松 向井去来門松に聞けとよ鐘も無常院 各務支考花十八門松琴を含むかな 井原西鶴門松やわがほととぎす発行所 正岡子規 序でに、この風習は我が国だけのものではなく、欧米にも長く伝わる風習である話を添えます。
ローマ征服やゲルマン大移動のはるか以前のヨーロッパ文明を支えていたケルト民族が、冬になってブナやカシの葉が枯れてしまっても、その枯れ枝から鮮やかな緑のヤドリギ(寄生木)が生えていることに驚き、そこには神が宿ると考えたようです。
ケルト人たちは、これをゴールデンバウ(金の枝)と呼び、これを祭司が金の鎌で切り取って祭壇にささげ、冬至に春を待つ祈り(新年の祝い)としました。
今でもアイルランドやスコットランドなどの一部集落には、元旦に寄生木の枝を詰めた駕籠を肉親に送る習慣が残っています。
英国では、今も寄生木は招福植物と考えられ、クリスマスの時にこの枝を玄関や部屋の扉に飾る風習があります。
確かに寄生木は英語でパラサイトと言い、寄生植物ですから、日本人にとってはピンとこない訳ですが、別の観点から思うに、「常緑樹に神が宿る」という点で、共通性が見えてきます。
 なお、キリスト教以降の欧州では、地域によって寄生木を魔除けとして用いるところもあり、これを子供の首に巻くとか、家畜小屋の門につるしておくと、悪魔や魔女を追い払ってくれると信じられて来たようです。
また、欧米でも常緑樹を神聖視する風習は、クリスマスリースと呼ぶ、ヒイラギやモミなどの常緑樹の小枝で作った輪状の飾りを玄関や壁に取り付けたり、クリスマスツリーにも、その名残を今に留めています。