2004年12月23日に「白髪発生のメカニズム」(Mechanisms of Hair Graying)という論文が電子版サイエンス誌に発表されました。
主筆は米国ダナファーバーがん研究所のデーヴィッド・フィッシャー教授(David E. Fisher)。
日本でもマスコミに採り上げられ、白髪防止薬を期待する論調もありましたが、防止薬の完成までには、まだまだ大きなハードルがあります。
発表された研究は、白髪の原因であるメラノサイト幹細胞の自然死に関わる遺伝子解析。
メラノサイト幹細胞は、悪性の皮膚がんであるメラノーマ(Melanoma)発現の原因ともなりますから、意図的な細胞増殖、修復などの操作は、皮膚がん発生の危険性に繋がります。
フィッシャー教授らが、メラノーマ研究の途上で、このような発表をしたのは、地味なメラノーマの研究を、一般人向けにアピールさせる狙いかもしれません。
1.白髪発生のメカニズム、メラノサイト幹細胞の自然死
白髪発生のメカニズム研究は京大の西川伸一教授らが10年以上も先進していました。
今回の電子版サイエンス発表の共同執筆をしたダナファーバーがん研究所の西村栄美(エミ)博士(Emi K. Nishimura)は、2002年に、西川伸一教授の大学院研究室に在籍中、西川伸一教授や理化学研究所の大沢匡毅研究員らとともに、白髪メカニズムの基本をすでに突き止めています。
リンド博士によればメラノーマは、早期発見できずに皮膚下に深く侵入すると、治療が困難になります。
皮膚がんの最も深刻な症状であり、ここ数十年、増加傾向が顕著です。
2004年の米国癌協会(The American Cancer Society)の発表では55100人の 患者が報告され、7910人が死亡しています。
4.ダナファーバーがん研究所(Dana Farber Cancer Institute)
1947年、シドニー・ファーバー博士(Sidney Farber)の提唱により小児科がん治療を目的に設立。
1969年、成人の患者も受け入れ、1974年にはシドニー・ファーバー・がんセンター(Sidney Farber Cancer Center)と改名。
1983年、チャールズ・ダナ基金(Charles A. Dana Foundation) の貢献に伴い、現在の名称となる。
ダナファーバーがん研究所はハーバード大学医学部(the Harvard Medical School)の基礎研修施設でもあります。
従業員約3000人を擁する、米国ではトップクラスの研究所であり、国立がんセンターの機能をはたす治療施設ともなって、年間15万人の患者を治療しています。
西村栄美博士らは、研究所のメラノーマ・プロジェクト(the Dana-Farber Program in Melanoma)に参画していますが、ボストン小児科病院(Children's Hospital Boston)(5項参照)の 小児がん部門(the Department of Pediatric Oncology) にも在籍しています。
博士らのメラノーマ研究は米国厚生省(the National Institutes of Health)や2002年の資生堂大賞The Shiseido Award)チャールス・キング信託基金(The Charles A. King Trust of Fleet National Bank)など、いくつもの有力スポンサーが援助。
今回の研究発表にはブリガム・ウィメンズ病院(Brigham and Women's Hospital)の病理学者スコット・グランター氏(Scott R. Granter)も共同研究者として名を連ねています。
5.ダナファーバー・ボストン小児科病院(Children's Hospital Boston)
ダナファーバー・ボストン小児科病院は世界一といわれる小児科研究機関。
病院は100年にわたり小児科や成人病の研究に貢献してきました。
現在は国立科学アカデミー(the National Academy of Sciences )の会員8名を含む、500人を超える優れた研究者が在籍。
この病院はハーバード大学医学部の小児科研修施設ともなっています。