食在亜細亜:アジアの生鮮食材

アジアの食用蟹文化(4):
北海の蟹漁(かに)最前線は太平洋戦争の激戦地:
アリューシャン列島アッツ島の玉砕

2017/08/14
最終更新:2026-09-17

終戦記念日が近くなるとマスメディアを賑わすのが太平洋戦争の回顧録。
恐ろしく、悲惨な戦争の体験談を経験者が語り継ぐのは後世のために重要なこと。
特に経政官界のリーダーはほとんどが大戦後生まれで軍、警察、省庁の権力乱用の実態を知らない世代。
国民も体験者が少なくなり、声が小さすぎるのか、戦後に占領軍主導で奪い返した国民主権を元に戻す動きがありますが、少しでも抑制するために、太平洋戦争の実態を明らかにし、記録するのは重要なことでしょう.
 
ウナラスカなどアラスカ州に多いハクトウワシ(白頭鷲)はアメリカ合衆国のシンボル
写真はダッチハーバー町で撮影した猛禽の白頭鷲(ボールド・イーグル:bald eagle:Haliaeetus leucocephalus).
米国の力の象徴として双頭の鷲(ダブル・イーグル)がコイン、切手などにデザインされています.
一時は絶滅危惧種(Endangered)になったくらいの希少保護動物ですがアラスカ州では見ることができます.

アラスカ州から細胞内の染色体のように細く、長くベーリング海に横たわるアリューシャン列島。
(Aleutian Islands :大きな島だけで55島、内14島は火山島)
水産関係者なら誰もが知るカニ、タラなど北洋水産物の漁業基地と水産加工基地があります。
アリューシャン列島先端部分のキスカ島(Kiska Islands )とアッツ島(Attu Islands)は太平洋戦争開戦当初の戦略で日本軍が上陸した米国領土。
アッツ島は占領した日本軍守備隊の悲劇の玉砕があった、知る人ぞ知る激戦地です.
現在でも米海軍基地がおかれています。
  
タラバガニハナサキガニ(花咲ガニ:Paralithodes brevipes )
 

写真上)茹でて赤くなるのがズワイガニ.食卓を飾るオード―ブルの華.
境港など日本海産が有名ですが、活きたオスは非常に高価.
(写真下左)水揚げ時に赤いのは紅ズワイガニ.最も漁獲量が多く、安価なカニです.

 
(写真上右)タラバガニはカニの王様.極近似種にアブラガニがあり、日本では安価になりますが、お買い得なカニです.
タラバガニは大型ほど価格が高く、最近は庶民には手が届かなくなりました.


(写真上)ツーリスト用のおみやげ.ベーリング海とタラバが刺繍されている

カニの種類など詳細は下記にロハスケの解説がありますが写真は重複しています.
https://botanicals.co.jp/library_view.php?library_num=248
 
アリューシャン列島の水産業の拠点となるウナラスカ島(Unalaska islands)はフォックス島(Fox islands)を構成している島。
ロシア海軍のベーリング*に発見されたといわれる大きな島です。
日本軍が守備隊を配置したアッツ島はアラスカ半島より約1,600㎞は離れていますがウナラスカ島は列島の中間点より西寄りの最大人口の島。
先住民は(Aleut:アリュート族、アレウト族)またはUnangan(ウナンガン)と呼ばれ、その歴史は8,000年以上もさかのぼるそうです。
1800年代にはウナラスカ島のダッチハーバー(Dutch Harbor)がカワウソやラッコの毛皮取引所として栄えた歴史があります。
その後タラやニシン漁が盛んになりましたが、現在はベーリング海(*Bering Sea)でのタラバガニ、ズワイガニ、スケトウタラ漁が中心.
(*Ivan Ivanovich Bering:ロシア海軍所属のオランダ人探検家)
現在の人口は3,000人から5,000人.定着している島民登録者は4,200人くらい.
不定期滞在者が多いようです.漁業のシーズンには季節労働者が1万人を超えます.
季節労働者はフィリピンを始めベトナム、アフリカの人達。 中国人、韓国人は居ません。
すでに漁業関連権益が固定しているからです。

春から夏のシーズンは釣りをする人、海洋研究、調査をする人などで賑わいますが、ウナラスカ(Unalaska)にはホテル、スーパー、レストランが、それぞれ1軒のみ。
漁業関連業者は寮が完備しており、関連ゲストもそこに泊まれます。
 
写真上右はウナラスカ島のダッチハーバーと水産加工拠点の一つケダック島(Kedak)の拡大衛星写真写真上左は上段地図の衛星写真.
アンカレッジからウナラスカ島とケダック島への位置を示しています.


ウナラスカには国際空港があります.
アンカレッジから飛行機で2時間30分くらい空港の歓迎サインボードには国民のナンバーワン漁港との表示があり、左端に島の位置と日本、カムチャッカ半島、米国とカナダ西海岸、ヨーロッパへの貿易が記されています。


 
ダッチハーバー空港に隣接するビジター・センター*.太平洋戦争のメモリアル・ミュージアムがあります.
*Aleutian World War II Visitor Center冷静になって太平洋戦争の実態を見つめるのは再発防止に必要なこと.
太平洋戦争のメモリアル・ミュージアムは世界各地にありますが、激戦のあった地域に必ずあるわけではありません.

ウナラスカ(Unalaska)の中心地ダッチハーバー(Dutch Harbor)には中距離ジェットの空港があり、列島最大の水産基地となっています。
ダッチハーバーは1942年6月にアリューシャン作戦の中心地として日本海軍航空機の爆撃を受けました。
魚港はベーリング海などで操業する水産業者の中心基地。
日本のニッスイ、ニチロの工場もここにあります。

列島先端に近いアッツ島守備隊の玉砕者は約2,700人くらいといわれていますが、作戦全体の軍人、民間人を含めた死者総数はその何倍もだったといわれます。
アジア各国や中国大陸など他の激戦地に較べれば大きい数字ではありませんが、日本軍が制空、制海権を持ちながら、守備隊への武器弾薬、食糧の補給が絶たれ、最後は手ぶらの突撃しか選択肢の無かった北海の孤島アッツ島の悲劇的玉砕。
時の政権や大本営の権力者、指導者のご都合主義、利己主義が如実に現れ、10代、20代の若者を見殺しにした例として語り継がれています。
 
(写真下)
ダッチハーバー急襲を含むアリューシャン作戦を指揮した連合艦隊総司令官山本五十六元帥の写真が飾られています。


列島各地で最大の水産加工会社は1973年創業のトライデント社(Trident seafoods).
トライデント社は比較的新しい会社ですが、コナグラ社(ConAgra)、タイソン社(Tyson)、ニチレイ食品(すり身部門)をはじめ、多数の大食品会社の水産部門を吸収合併して、現在の水産加工業の規模は全米一といわれます。
日本の進出企業は世界最大の水産加工会社といわれるマルハニチロ社傘下のウェスト・シーフード社(Westward seafood)と日本水産株式会社(ニッスイ)傘下のユニシー社(UniSea).
下の写真はトライデント社の会社案内.
  
             
写真上は帰港したズワイガニ漁業船.           
タラバガニ、ズワイガニ漁各々の最盛期は一攫千金を狙う季節労働者が群がり
腕の良い漁師は一航海で1,200万円くらいの収入となるそうです.
 

アラスカ州の西南にエイの尾のように伸びるアリューシャン列島(Aleutian Islands)のフォックス諸島(Fox Islands)先端部分に位置するのがウナラスカ(Unalaska)島.
その中心部にダッチハーバー(Dutch Harbour)があります。

(写真)アンカレッジ国際空港に飾られた観光イラストボード(一部).
各種のサーモン、カニ、ニシンがダッチハーバーの重要水産物. 
このイラストはウナラスカ島などアリューシャン列島へ行く観光客(主として釣り客)向け待合室にあります.
セイウチの下は各種の鮭類.
(King salmon, Red salmon, Dog salmon, Pink salmon, Silver salmon.)
原住民女性が吊るしているのは特産鮭の干物.

生鮮食材研究家:しらす・さぶろう取材:サルバトーレ松波