ケン幸田の世事・雑学閑談(千思万考)
第四十二話:「中国主導AIIBの問題点を考察する」
2015/03/06
最終更新:2026-09-08
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習近平政権の狙いは、数々の主席発言を要約すれば“世界帝国建設をめざし、アジアへの米国関与を排除したい”ことにあり、「アジアインフラ投資銀行=AIIB」設立の趣意もその路線上にあることは否定できません。 中国は、一方でアジア開銀の総裁を長年求めて得られず、IMF特別引き出し権SDRを巡って、活用拡大を提唱するも採用されず、米国主導の国際金融界への不満を募らせてきましたので、その面当てもあるのかも知れません。元来、国際金融機関としては、世銀(グループに国債開発協会や金融公社を含む)、アジア開銀(ADB)、欧州復興開銀、アフリカ開銀、米州開銀とか、多国間の北欧開銀、OPEC機 関、イスラム開銀、国際農業開発基金等や、準地域的金融機関として、アンデス、中米、カリブ、東西アフリカ等もあって、世界的環境配慮や公平性にも配慮 し、総務会、理事会を通じ、民主的な運用を図っております。 中でもアジア開銀は67ヶ国の加盟を得て、高所得開発途上国への融資「通常資本財源」と低所得 向けに緩和条件付き融資「特別基金」という財源を備え、加盟国からの出資金、準備金、民間資本借入金で運用しています。日本は最大出資・債権国であり、基 金の最大拠出国でもあり、歴代の総裁を務め、総勢百名を超えるスタッフを出しております。 一方で、世銀の姉妹機関としてのIMFは、 国際通貨安定を旨とし、188の加盟国の世界金融セクターの強化と規制改善に取り組んでおり、日本は第二出資国、円が第三の基軸通貨となって「自由利用可 能通貨」認定を受けております。 こうした旧来の国際金融秩序に対する反目と挑戦こそ、オバマ米国の弱腰を突くパワーゲームとも見られます。 中国指導部が、昨夏合意されたBRICS銀行(新開発銀行)に続いて、AIIBを 通じた更なる海外戦略を急がざるを得ない要因は、内政事情・自国の窮状打破にもあったのです。 御存知のように中国経済は「新常態」と称する事実上の成長鈍 化容認と過剰投資依存の苦境にあり、国有企業軍による資源エネルギー、鉄鋼、化学金属、通信、鉄道、建設、自動車産業等の過剰生産・過剰在庫や国有金融業 と地方政府による過剰なインフラ・不動産投資と銀行融資がシャドウバンキング問題を惹起し、資本ストック調整と言う反動不況リスクを高めており、併せて環 境劣悪化、所得分配の失敗=格差拡大と失業増による国内消費の低迷、過剰労働力を含め、捌け口を海外進出に求めざるを得なかったというのが真相でしょう。 インフラ投資ブームを演出することで、必要資金を国際金融市場から調達しAIIB名 義の下、中国主導の経済圏をアジア一帯に拡大することを通じて、余剰労働力、過剰生産能力、過剰在庫を活かす需要の創出を図ろうというのが狙いです。すで に46ヶ国もの参加国表明を受けているようですが、いずれもが経済苦境に陥っている諸国の「溺れる者、藁をもつかむ」現象かと案じられ、中国共産党支配が 実態の“国家資本主義の歩む危険な進路の行方”に目を閉ざしているやに思えます。以下に、重大な問題点を挙げておきます。 まず、中国の外貨準備高が4兆ドル弱もあるという世評と言うか“盲信”があるようですが、実体は大半が負債であり、見せ金と言うか、張子の虎の虚勢とみる べきではないでしょうか。 このところの景気低迷、不動産バブル崩壊や、不正蓄財のマネーロンダリングなどにより、大枚の資金流出が累増し続けているので人 民元システムを維持するため、国際金融市場からの借り入れが急増しているようで、これでは、アジアインフラ投資に回す金など底をついているというのが実情 です。 一説に、中国は実質2兆ドルの負債を抱えていると囁かれております。 しかも、人民元はドルペッグ制であり、米国債を容易に売れないし、いずれAIIB宗主としては、人民元のSDR通貨採用、基軸通貨化が避けられず、変動相場制へ移行せざるを得なくなるので、その際の為替差損が膨大になると言われて居ます。未だに日本からのODAを受け続けている中国が、資力の出し惜しみをしそうなことが目に見えているとも言えましょう。 これまで国際金融機関の主要出資国として、幹事国として、それらの運営実績を長年積み上げてきた米国や日本からのAIIBに 関する問い合わせに対して、これを主導する中国は、参加国間の利害調整機関や組織の透明性などの肝心なポイントになると明言を避けており、初代総裁を中国 が占め、共産党独裁方式での管理運営を狙っているのかと言う疑いが晴らされていません。 特に総務会、理事会等の組織体制、決議方式も不案内の上、資本送金 の自由化度、融資投資の審査体制や基準が全く不明で、乱開発・環境破壊とか返済能力の問題解決方式がブラックボックスの状態で、このままでは、ギリシャ問 題を誘発したユーロ危機の再現の怖れさえ、疑われます。 バスに乗り遅れるな、とばかりに急いで参加表明した諸国の場合、経済優先、実利主義に走り、地道な 損得勘定や中国共産党政権の意を受けた舵取りに対する疑念を二の次としたようで、特に経済先進国の独仏英などは、いずれ過剰な出資を求められるも、割の合 わない利権の現実に苛まされる危惧を抱かなかったのだろうかと不思議を覚えます。平和なインフラ融資と経済圏共有と言った美辞令句の表看板の裏に、第二シ ルクロードと言うユーラシア大陸支配と、西太平洋からインド洋に至る港湾と海洋支配を目論む安保・覇権の目的を隠さない主席の言明とか、西側諸国のまだ るっこい民主主義ルールでなく、共産党独裁方式によるAIIB設営方式を示唆する財務省首脳の強弁などを警戒する経験値を持つのは、どうも日米(と今の所カナダも)しか居ないようです。 もっとも、日本にも、平和ボケで経済至上主義者がかなり居るらしく、財界、学界、ジャーナリズム界などから、AIIB加盟を迫っているようで、外交下手、諜報・情報力の弱さを露呈しています。 目下判明している情報に基づき、AIIBを既存のADPと対比してみますと、資本金は当初500億ドルとADBの三分の一でスタートするようですが、出資率で中国が最大50%最小でも40%を握って議決権を抑え、本部を北京に置く他、総裁も中国から出すことも決めているようで、意思決定権を一手に握る算段が明白です。 一方ADRの 場合、最大出資国は日本と米国が等分の15%強を担っておりますが、本部をフィリピンのマニラに置き、その議決権は、出資率の高い国には相対的に少なく割 振り、出資割合の少ない国にも議決権を多く割当てすることで、恣意的な判断がなされないよう、極めて公平無私な観点で調整されています。 AIIBは、 近日中に創設メンバー国の承認作業を終え、6月を目途に、中国以外の諸国の出資比率や組織運営法、融資制度、入札制度、評価法などを取り決めるようです が、すでに中国が大半の出資率と初代総裁を出すことを既定路線としており、審査基準の不透明さ、乱開発の歯止めを欠くなどと言った懸念、多くの矛盾と公平 性を欠く諸条件が取り除かれなければ、ADBからの協調融資や補完の実行が到底不可能と言うほかありません。いずれにせよ、如何な中国とて、世銀、IMFやADBを完全無視して国際社会にエゴを無理強いすることは許されませんし、日米安保、TPPの進捗具合も絡む日米(加)にとって、ここは静観を決め込むことこそ、得策ではなかろうかと思量する次第です。 |
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