健康と食品の解説
増え続けるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)と肺炎球菌感染症
2014/12/05
最終更新:2026-09-13
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慢性気管支炎、肺気腫などと呼ばれていた肺疾患がCOPD(慢性閉塞性肺疾患)と総称されるようになったのは2000年代ごろから。 喫煙が主原因とされていますが、急成長する発展途上国都市部では大気汚染も大きな原因と考えられています。 COPDは重症化した場合に治療法がほとんどありません。 ![]() 1.COPD(慢性閉塞性肺疾患)が流行させる新型インフルエンザhttp://botanicals.co.jp/library_view.php?library_num=202 ![]() 今年(2014年シーズン)のインフルエンザ流行は例年より早く始まりました。 最近はワクチン接種が普及したのと、タミフルなどノイラミニダーゼ阻害剤による初期段階での封じ込めが功を奏し、インフルエンザが重篤化することが少なくなりましたが、児童の脳炎、健康弱者の肺炎は相変わらず減りませせん。 鳥インフルエンザH5N1などの変異による発生が予想される新型インフルエンザは、拡大するとすれば要因として呼吸器関連疾患を持つ人たちの急増が挙げられます。 世界の保健当局が懸念するのはこの点です。 喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などで免疫力が弱まっている時が最も新型インフルエンザ・ウィルスに抵抗力がない時と考えるべきでしょう。 COPDのほとんどが自覚症状の軽い潜在患者であるがために、その数は8千万から1億人以上といわれており、新型インフルエンザが人から人への感染が始まったときには大きな伝染源となります。2.COPD(慢性閉塞性肺疾患)は大気汚染と喫煙が主因大気汚染、空気の悪い職場環境や、一部は遺伝的要因も関与するとされていますが、一番多い原因は喫煙によるものといわれています。 また、急成長する発展途上国都市部では大気汚染も大きな原因と考えられています。 症状は肺活量減少による息切れ、慢性の咳、倦怠感ですが、加齢による息切れや慢性の咳は誰にもあるわけではありませんから、このような症状が感じられる人は要注意です。3.世界のCOPD(慢性閉塞性肺疾患)患者は8,000万人COPDは死亡原因として世界第6位ですが、今後は急増して、2020年頃には第3位になると予測されています。 2005年のデータでは世界のCOPD患者は8千万人から1億1千万人。 死者は3百万人といわれます。 統計はあくまでも想定数ですが、喫煙を原因とする死者は540万人といわれ、その半分以上がCOPDを原因とすると推定されています。 世界保健機関(WHO)は2002年から11月に「世界COPDデー」を定め、世界各国でのPR活動を行っています。 2014年は11月19日が「世界COPDデー」でした。 恐ろしい慢性疾患にかかわらず、医師を含めて知識の普及が遅れているからです。 COPD(慢性閉塞性肺疾患)は糖尿病、アスベスト中皮腫などと同様に急性疾患ではなく、重篤化し、手遅れになるのに15年から30年かかります。 したがって日本を例にとれば感染者の20人に1人未満が治療を受けているのが実情だろうと推定されています。4.米国のCOPD(慢性閉塞性肺疾患)患者は1,400万人やや古い数字になりますが、米国では死亡原因の第4位がCOPDで、患者数は1,400万人、死亡者数は、年間およそ10万9000人、319億ドルが治療に費やされています。 第97回アメリカ胸部学会国際会議(American Lung Association)(2001年5月21日)での報告によれば、問題なのは、女性のCOPD死亡者が急増していることです。 女性は生理的にも喫煙が不向きといわれますが、ダイエットなどで喫煙しており、禁煙する人が男性より少ないのが原因とされています。 統計は古い数字ですが、このトレンドは現在も変わりません。5.日本のCOPD(慢性閉塞性肺疾患)患者は500万人?COPD(慢性閉塞性肺疾患)は60歳くらいから急増する高齢者に多い病。 喘息症状を持ついくつかの肺疾患の総称ですから、統計のための分類も困難ですが、高齢人口の増加が著しい日本では、平行してCOPDの患者も増加していると推定されています。 気管支炎を除いた最近の高齢者の患者数は10数万人が把握されている(治療している)ようですが、進行が緩やかなため、疾病の重大性が認識されておらず、患者の95%以上は適切な診断を受けていない可能性があります。 関係者の間では、国内の潜在患者数を500万人以上と推定しています。 したがって患者として顕在化していない方が、ほとんどで、統計に大きなギャップがあります。6.COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは専門家がCOPDと呼ぶ疾患はchronic obstructive pulmonary disease(慢性閉塞性肺疾患)の略語。 特定の肺疾患というわけではなく、気道の炎症が悪化し、慢性気管支炎のような症状が出たり、気管支の先にある肺胞(はいほう)が壊れて呼吸が困難になったりする肺気腫も含まれます。 喘息との識別が困難な疾病ですが、高齢者特有の疾患とされています。 若い人には少なく、40代から急増し、60代からは激増します。 COPDの早期発見にはスパイロメーター(フクダ電子などが製造している呼吸機能検査装置)が便利でしょう。 COPD治療の有効性を検証するためにはスパイロメーターのFEV1値(最初の1秒間の努力性肺活量)が用いられます。 COPDの兆候は慢性的な咳、息切れ、粘液の増加。 肺活量の減少、慢性の咳など兆候がある方は、COPDが慢性化する前に、医師と相談し、生活習慣や、医薬品のアドバイスを受けるべきですゆるやかに進行する呼吸器系疾患ですが、患者の肺機能を著しく低下させ、死に至る病。 現在までのところCOPDに有効な治療薬はなく、転地や、禁煙など生活習慣の改善のみが有効といわれます。7.COPD(慢性閉塞性肺疾患)治療の医薬品対症療法ではありますが、喘息と同様に気管支収縮抑制効果がある吸入剤が使用されます。 抗コリン薬(anticholinergic drug)といわれ、アセチルコリンが、その受容体へ結合するのを阻害します。 いずれも元素である臭素(Bromine)の作用を応用したものです。 臭素は毒性がありますが、古くから精神神経安定作用があることが知られていました。 危険性が高いために現在の医療では臭素そのものは使用されません。 *臭化チオトロピウム(Tiotropium Bromide Hydrate) ベーリンガーインゲルハイム社(Boehringer Ingelheim)とファイザー社が開発した抗コリン吸入薬。 スピリーバ(Spiriva)の商品名で販売されています。 初期には英国、ドイツ、オランダ、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、アイルランド、スウェーデン、フィリピンで発売されました。 2003年、他の欧州各国でも承認、販売され、日本では2004年から販売されています。 肺機能の低下率を軽減させるといわれます。 開発した両社によれば、2002年秋より6000名を対象とした臨床治験を4年間実施して、2007年にその報告をするとのことです。 その結果から2010年に改良されたバージョンを発売しています。 チオトロピウムは1日1回吸入する型の気管支拡張剤で、長時間のM3受容体拮抗作用(アレルギーを起こす抗体を細胞に取り入れさせない作用)があるといわれます。 *臭化オキシトロピウム(Oxitropium Bromide) テルシガン(Tersigan)の商品名でベーリンガーインゲルハイム社から販売されている一世代前の抗コリン剤 *臭化イプラトロピウム(ipratropium bromide monohydrate) アトロベント(Atrovent)の商品名で帝人ファルマが発売元となり、販売している8.肺炎球菌感染症(ニューモコッカス:pneumococcus)とは肺炎は世界の死亡者順位4番目にランクされていますが、肺炎の中で3割を占めるとも、それ以上とも言われて、最も多いのが肺炎球菌感染症です。 肺炎球菌感染症(Streptococcus pneumoniae)はストレプトコッカス(streptococcus:肺炎球菌:グラム陽性球菌の1種)を病原体とする感染症で、ニューモコッカス(pneumococcus)ともよばれます。 肺炎球菌感染症には多くの種類があり、広い意味では、肺炎球菌による肺炎の他、髄膜炎、中耳炎、副鼻腔炎、菌血症(敗血症)などが含まれます。 老人が肺炎球菌により菌血症(敗血症)、髄膜炎を発症した場合は死亡率が5割を超えるともいわれます。 肺炎球菌は皮膚や気道の粘膜に常在することが珍しくなく、免疫力が強い場合は発症しませんが、感染症は院内感染のケースが非常に多いことで知られています。 ペニシリンによる治療が有効ですが、近年はペニシリン耐性がある肺炎球菌(Penicillin-Resistant-Streptococcus Pneumonie:PRSP)の増加が報告されて、治療が難しくなりました。 新型インフルエンザが蔓延した場合には、肺炎球菌感染症患者は感染の可能性が高いグループです。 またインフルエンザ感染がきっかけとなっての肺炎球菌感染症も良く知られています。9.肺炎球菌感染症の予防ワクチン接種が遅れていた日本では中高年専用ともいえるポリサッカライド・ワクチン(多糖体ワクチン:PPV)が先行して認可されました。 このワクチンは子供が罹りやすい肺炎球菌による中耳炎や骨髄炎には有効といえないことから、肺炎球菌ワクチンで先進する欧米では無毒化したジフテリア菌と結合させた結合型ワクチンが開発されています。 米仏などほとんどの先進国で許可され、世界75カ国で乳幼児に使用されて大きな効果を挙げていますが、日本では2010年より接種が始まりました。 Corynebacterium diphtheriae*肺炎球菌ポリサッカライド・ワクチン(pneumococcal polysaccharide vaccine:PPV) 肺炎球菌の血清型は90種類以上発見されているようですが、通常見られるタイプの23 種類を対象としたPPV(pneumococcal polysaccharide vaccine)とよばれる肺炎球菌ワクチンがメルク社により開発されています。 日本ではモバックスとして万有製薬から売り出されていますが、昨年(2006年)の10月からは改定版(ニューモバックスNP:Pneumovax)となっています。 薬価が約5000円(2014年)と高額で、自己負担が必要なため、接種率が高いとはいえないのが難点です。 自治体によって金額は異なりますが高齢者の接種には5年ごとに補助金を出しています。 都市部の平均的な個人負担は2,500円から4,000円くらいです。 肺炎球菌ワクチンの抗体は2-5年永続しますので、毎年接種する必要はありません、というよりはアナフィラキシーの危険があるために複数回のワクチンは推奨されていません。 *肺炎球菌結合型ワクチン(Pneumococcal Conjugate Vaccine:PCV) ワクチンメーカーのワイス・ファーマシューティカルズ(Wyeth)(米国)により開発された画期的なワクチン。 ワイスが開発したものは、主要な7種類の肺炎球菌血清型をワクチン化した7価結合型肺炎球菌ワクチン(PCV7)でプレベナー(Prevenar)の商品名で発売されています。 米国では2000年より5歳未満の小児の定期予防接種にプログラムされています。 2001年に認可されていた英国では昨年(2006年)より幼児の定期予防接種プログラムに採択されました。 幼児の肺炎球菌による中耳炎は全米で600万人はいると言われ、肺炎球菌の血清型が一致した場合の結合ワクチン有効率は非常に高い(50%以上)といわれます。 中耳炎以外にも髄膜炎、敗血症など肺炎球菌による致死率の高い感染症を防ぐことができる期待のワクチン。 幼児、小児の感染者が減少することは老人の感染が減ることにも通じます。 今後の課題は有効率の高い血清型の選択です。10.呼吸器多細胞ウィルス(respiratory syncytial virus:RSV)欧米ではRSVと呼ばれる呼吸器多細胞ウィルスによる死者が増加しています。 これまでは、乳児、幼児が中心の風邪様の病気といわれてきました。 風邪との識別が困難であったのと、成人の発病は軽度であったために、研究が遅れ、軽視されてきましたが、最近になって、米国では高年齢者に多発し肺炎を引き起こし、死亡者が急増しています。 年平均11,000人(CDC)または18,000人(JAMA)の死亡者があるそうです。 両者の数字には開きがありますが、実際の数字はもっと大きいとも言われています。 日本では個別の統計がありません(2006年)。11.細気管支炎(Bronchiolitis)上記の呼吸器多細胞ウィルス(RSV)が気管支の末端にまで入り込むと細気管支炎とよばれる炎症が起きます。 肺胞に近い細い気管ですから、炎症を起こすと呼吸が苦しくなります。 特にぜーぜーと呼吸が苦しそうな咳が頻発した幼児、乳児、老人は重篤な悪化が予想されますから入院の必要があります。12.ヒト・メタニューモウイルス(human metapneumovirus:hMPV)パラミクソウィルス科(Paramyxoviridae family)のウィルス。 高熱、激しい咳、鼻など粘膜の炎症がおきる。 一般的に風邪(common cold)と診断されていた症状と類似しており、上記の呼吸器多細胞ウィルス(RSV)とも遺伝子的に非常に近いので、区別がつかないことが多いともいわれる。 幼児の気道感染の12-30%を占めるという報告もあり、日本でも珍しくはありません。 ウィルスが分離されたのは2001年と比較的新しく、ロッテルダム大学(オランダ)のアルバート・オスターハウス(Albert Osterhaus)が発見者といわれます。 遺伝子的には七面鳥、鶏を主たる宿主とするアフリカ発のパラミクソウィルスの鳥ニューモウィルス(avian pneumovirus)に近いといわれます。 日本で確認されたのは1980年代後半、人獣共通感染症とは言われていませんが、鳥インフルエンザ同様に不明の部分が多いために、警戒をする必要があります。13.ヘモフィルス・インフルエンザb型(Haemophilus influenzae Type b:HIB)とは1800年代から知られていたヘモフィルス属のグラム陰性桿菌。 種類はいくつかありますが、タイプbと呼ばれるものが危険といわれます。 インフルエンザ様の症状を呈するので、このような名が付けられたといわれますが、RNAウィルスのインフルエンザ・ウィルスとは類似点がありません。 乳幼児の気道に常在しており、発症すると熱、咳、鼻など粘膜の炎症を起こします。 危険なのはこの菌による肺炎、中耳炎、髄膜炎ですが、初期症状から呼吸器多細胞ウィルス、メタニューモウイルスと識別することは容易ではありません。 ウィルスではありませんのでペニシリンや、その後に開発されたキノロン系抗生物質(クラビットなど)が有効といわれます。 ワクチンは破傷風トキソイドとの結合型ワクチンが開発されて、大きな効果をあげています。 ワクチンは世界100カ国で乳幼児に接種されていますが、日本ではまだ許可されていません(2006年)。14.インフルエンザ脳炎と解熱剤インフルエンザ脳炎は小児を中心に死亡者が報告されている脳炎。 各種インフルエンザ・ウィルスが脳内に侵入して起こります。 同様に骨髄などに侵入することもありますから、幼児、小児がインフルエンザにかかったときは細心の注意が必要です。 脳炎は、解熱剤との関連がかなりの確度で疑われていますから市販薬を使用する場合は薬剤師に成分を確認してください。 米国ではすでにアセチルサルチル酸(商品名アスピリン等)に関して、ライ症候群(脳炎などのように嘔吐、痙攣から症状が始まる)との因果の認識から、小児にはアスピリンが使用されていません。 アセチルサルチル酸以外にもジクロフェナクナトリウム(ボルタレン等)、メフェナム酸(ボンタールシロップ等)が疑われますが、ポピュラーな薬ですから服用には注意が必要です。 初版:2007年1月改訂版:2014年12月 |
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