健康と食品の解説

抗体のメカニズム:脂肪酸が関わるアレルギーと喘息

2013/10/04
最終更新:2026-09-13
アレルギーは4人に一人が持つといわれる免疫過剰疾患。
花粉症が最も身近ですが、最近は小麦、蕎麦など数多くの食品アレルギーが目立って多くなったようです。
アレルギーにはアナフィラキシーと呼ばれる危険なショック反応がありますから誰もが基本的な知識を持つべきでしょう。
マスコミの報道は一般人には難解ですが、医学界の業界用語そのままが溢れているからです。
T細胞は胸腺細胞、B細胞は骨髄細胞と呼べば身近。
T、Bは業界用語ですが英語の頭文字を使用しているだけ。
省略しない原語か、日本語で表現すれば格段に理解しやすくなります。



1.骨髄細胞(B細胞)と胸腺細胞(T細胞)抗体を造る細胞(cell)は骨髄由来の骨髄細胞。
骨髄(bone marrow)の英語頭文字でB細胞と呼ばれます。
この細胞に伝達物質(サイトカイン:cytokine)で指令を与えるのが多田富雄博士の発見で著名なヘルパーT細胞(Th2細胞)。
ヘルパーT細胞は胸腺(Thymus)で造られる胸腺細胞(Thymusの英語頭文字でT細胞)の1種です。
骨髄細胞の働きを助けることから名付けられました。
Thのhも英語。助けるものhelperの頭文字。
サイトカインは広い意味を持つ言葉で、インターロイキン(Interleukin:ILと省略される)など数百種類があるといわれるホルモン様伝達物質(細胞間のコミュニケーション機能)。
血管やリンパ管を循環する白血球の7割を占めるのが胸腺細胞(T細胞)ですが、T細胞には他に自分自身以外を殺すキラーT細胞(Killer T cell)、それを抑制(suppress)するサープレッサーT細胞(Suppressor T cell)があります。
日本の多田富雄博士がこの分野の第一人者です。2.抗体と免疫グロブリン抗体(アンチゲン:antigen)の別名が免疫グロブリン(Immunoglobulin)。
ImmunoglobulinはIgで表されます。
抗体は侵入抗原(アレルゲン:allergen)にあわせて無数(数千万から1億とも言われている)に作られるたんぱく質です。
抗体は大IgA、IgE、IgM、IgG、IgDの5種類のクラスに大別されていますが、記号にあるIgは免疫グロブリン(Immunoglobulin)の略語。
抗体(免疫グロブリン)の80%以上を占めるのがIgGです。

抗体には病気を防ぐ重要な働きがある反面、元来無害な花粉やハウスダストに過剰反応し生体を傷つける抗体もあります。
この中でもIgE抗体は喘息や花粉症に関わる有害作用物質を産生する悪玉抗体として知られています。
この重要な悪玉抗体を発見したのは石坂公成博士。
最終的に米国カリフォルニア州ラ・ホヤのアレルギー研究所で研究をされた方ですが、アレルギー分野での多大な功績により文化勲章を授与されています。3.花粉症、喘息などアレルギーに関係するIgE抗体とIgA抗体IgE抗体の量は5つの抗体の中で最低の1%以下ですが、強い機能を持ちます。
健康な人に較べてアトピー患者に非常に多くみられますが、文明的な国民ほどIgE抗体が多くなるといわれています。

IgA抗体は抗体全体の10%くらいを占めます。
IgAが多ければIgEは拮抗して制御され、アレルギーは起き難くなりますから、アトピー患者はIgAが通常の人より大幅に少ないといわれます。4.IgE抗体が肥満細胞(マスト細胞)より有害化学伝達物質を産生させる花粉やハウスダストなどの抗原(アレルゲン)と結合したIgE抗体は、肥満細胞(マスト細胞:Mast cells)などの細胞膜受容体と結合して喘息や花粉症の原因ともなる有害な各種の化学伝達物質(ケミカルメディエーター)を放出(遊離)させます。

この時に抗原を認識して伝達物質(サイトカイン)により指令を与えるのが胸腺細胞の一種であるヘルパーT細胞です。
指令を受けた抗体は肥満細胞(マスト細胞:Mast cells)などの細胞膜受容体と結合して化学伝達物質(ケミカルメディエーター)を遊離させます。5.花粉症、喘息などの原因となる化学伝達物質、ロイコトリエン(LT)とトロンボキサン(TX)脂肪細胞などが遊離する有害な化学伝達(遊離)物質(ケミカルメディエーター)には、ヒスタミン(Histamine)、ロイコトリエン(Leukotriens)、トロンボキサン(Thromboxane)などがあります。
ロイコトリエン(LTで表されます:白血球のleukocyteの省略語ネーミング)はヒスタミンに較べ数千から10000倍もの活性作用がある物質といわれ、炎症の原因物質となります。
トロンボキサンは気管支平滑筋や血管平滑筋を収縮させます。
ます。
この有害化学伝達物質(ケミカルメディエーター)の原料となるのが植物性食用油のオメガ6脂肪酸です。
脂肪酸が関わるアレルギーと喘息はオメガ6過剰により脂肪酸バランスが崩れることから始まります。
(参照)
アレルギーの原資となるのは脂肪酸.下記記事で脂肪酸を理解してください.
リノール酸(オメガ6)の摂取過剰によるバランスの破壊がアレルギー体質へ変化させます.
天然魚油のDHA/EPA(オメガ3)とは:脂肪酸代謝物エイコサノイドとプロスタノイド
 6.造血幹細胞(Blood Stem Cell)と免疫細胞(immunocytes)造血幹細胞は血球の全てを造る幹細胞です。
骨髄に存在するのは少量ですが、大きな造血能力を持ちます。
造血幹細胞で造られる血球は、赤色素ヘモグロビンを持つ赤血球と血小板(巨核球)以外は免疫系細胞と呼ばれる白血球です。7.白血球(leukocyte a white blood cell white corpuscles)白血球は免疫系細胞と同義語で以下の種類があります。

*顆粒球と呼称される好中球(neutrophil)、好塩基球(basophil)(こうえんききゅう)、好酸球(eosinophil)、肥満細胞(マスト細胞:Mast cells)。
好中球が白血球全体の50%以上を占めます。
*単球と呼称されるマクロファージ(貪食細胞:macrophage)、*リンパ球(lymphocyte)と呼称される骨髄細胞(B細胞)、胸腺細胞(T細胞)、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)
悪玉抗体のIgEがアレルギー性疾患の原因物質を生み出すのは、肥満細胞?、好塩基球(basophil)、好酸球(eosinophil)。

*肥満細胞(マスト細胞:Mast cells)
肥満細胞(マスト細胞)は人体のあらゆる部位に存在しますが、特に皮膚、目、鼻など粘膜組織に多く存在します。
脂質が蓄積するとサイズが大きくなります。
肥 満細胞はアレルギーに関連する他、心臓血管関連疾病や肥満に関連する各種ホルモンを分泌することが明らかになり、この中でもアディポネクチンとレプチンと の研究が進みつつあります。8.アディポネクチン(adiponectin) アディポネクチン(adiponectin)はインスリン感受性ブドウ糖濃度低下ホルモン。
東京大学の山内敏正医師、門脇 孝助教授らがDNAのクローニングに成功しています。
アディポネクチンは、244アミノ酸残基から成るタンパク質。
脂肪細胞で産生分泌されます。
インスリンに感受性を示し、血中のブドウ糖濃度を下げる役割があるホルモンといわれます。

脂肪細胞が小さいと分泌が盛んになり、肥満化して大きくなると分泌が悪くなることが解明されています。
マウスレベルではアディポネクチンの欠乏で糖尿病になることが確認されており、肥満、Ⅱ型糖尿病患者、冠動脈疾患のアディポネクチン濃度は血漿中で減少しています(Nature. Jun. 12. 2003、Yamauchi.T et al)
アディポネクチンは酸化脂肪酸の発生などでおきる血管障害時に、障害場所に集積して動脈硬化抑制に働くという、いわば血管修復材の役割も持つそうです。9.レプチン(Leptin)レプチン(Leptin)・・・食欲抑制、脂肪分解ホルモン。
レプチンは1994年12月にロックフェラー大学及びハワード・ヒューズ医学研究所のジェフリー・フリードマン(Jeffrey Friedman)博士らによってネイチャー誌発表された脂肪細胞から分泌されるペプチドホルモン。
ギリシャ語のやせると言う意味(leptos)にちなんで命名されました。

レプチンは視床下部に存在するレプチン受容体に結合して食欲抑制と脂肪分解、褐色細胞においてはエネルギー代謝の亢進を促し、糖脂質代謝に影響を与えます。
レプチン欠損遺伝子を持つ家系に、合成したレプチンを投与すると異常肥満が治療できたという研究があります。
したがってレプチンは肥満を抑制すると考えられていますが、脂肪細胞からのレプチン分泌低下によってレプチンの血中濃度が低く、肥満になっている人の割合は多くはなく、90%くらいの肥満の人が通常のBMI値(肥満度)の人よりレプチン血中濃度が高いことが報告されていますので、機能の全貌はいまだに研究中とされています。10.自然免疫(innate immunity)と獲得免疫(adaptive immunity)自然免疫(innate immunity)は広い範囲の動物が持つ基本的な免疫。
病原体や抗原(アレルゲン:allergen)への生体防御反応です。
獲得免疫(adaptive immunity)は脊椎動物に限られます。
体内に侵入した病原体の種別を識別し、適正な対応(適応)をさせる免疫作用です。

獲得免疫に働く免疫細胞の形状が樹木的に突起があるために樹状細胞(dendritic cell)と呼ばれます。
樹状細胞は脊椎動物に侵入した病原体の種別を識別する先兵の働きをします。
抗原提示細胞ともいわれ、取り込んだ病原体( pathogens)の情報を、抗体となるT細胞、B細胞など他の免疫系細胞に伝え、対応(適応)をさせます。
樹状細胞はこの対応で体細胞に高頻度変異(Somatic hypermutation)を起こさせることが知られており、この働きが適応(adaptive)という言葉の元となっています。11.(参照)
2011年のノーベル医学生理学賞は自然免疫理論と樹状細胞(dendritic cell)の発見に
2011年のノーベル医学生理学賞は、これらの免疫システムを解明したロックフェラー大学(Univ.of Rockefeller)のスタインマン博士(Ralph M. Steinman)ら三人でした。
賞は半分がテキサス大学(University of Texas Southwestern Medical Center)のボイトラー博士(Bruce A. Beutler)と、フランス在住(the National Center of Scientific Research :CNRS)
のホフマン博士(Jules A. Hoffmann)らの自然免疫理論(innate immunity)。
もう一方の半分がスタインマン博士の樹状細胞(dendritic cell)の発見と、それが役割を果たす獲得免疫理論(適応免疫:adaptive immunity)。

免疫理論の研究は日本も進んでおり、1987年のノーベル医学生理学賞は利根川進博士が抗体の多様性、免疫遺伝子に関する研究で受賞。
残念ながら日本人の有力研究者の多くは米国で研究をしています。

初版:2006年02月05日改訂版:2011年10月改訂版:2013年10月