タイトルの流動性知能(fluid intelligence)とは*結晶性知能(crystallized intelligence)の対極にある言葉。
精神医学や認知症介護、治療に携わる方にはおなじみの言葉ですが、新たな知識を学習する能力。
記憶能力、認知能力、頭の回転の速さと言い換えることもできます。
*結晶性知能:記憶を積み重ねて蓄積されたものは結晶化するということでネーミング。
1.ワーキング・メモリー(作動記憶)をオメガ3が高める 「健康な若者のワーキング・メモリー(作動記憶:短期的な記憶の蓄積)を青魚のオメガ3が高める」という研究を発表したのはピッツバーグ大学の研究者ら。
「健康な若者のワーキング・メモリー(作動記憶)をオメガ3が高める」
Omega-3 Intake Heightens Working Memory in Healthy Young Adults記憶力ゲームのトップグループの記憶力向上に関する最初のオメガ3論文が掲載されたのは2012年10月3日の科学情報誌プロス・ワン(PLOS One)
魚や草食家畜に見られる必須脂肪酸の天然オメガ3は人体が機能するのに必要な栄養素ですが、健康な若者のワーキングメモリー(作動記憶)に与える効果を研究した論文はこれまでにありませんでした。
18才から25才の健康な若者が青魚のオメガ3を増やすことによってワーキングメモリーが向上することを証明したのはこの種の研究では初めて。
このプロジェクトの企画者であるビタ・モグハッダム(Bita Moghaddam)神経学部教授は「この実験結果データを見る前までは健康な若者の最高作動記憶能力を(それ以上に)向上させることはできない」と考えていました。
しかしながら教授らは、この対象グループがすでに記憶力に関してはトップグループであるにかかわらず、天然オメガ3脂肪酸がワーキングメモリーの性能をそれ以上に向上させることができるという結果を得ました。
作動記憶能力は民族、血縁など遺伝子により決まるといわれてきましたが、そればかりでないことを立証したことになります。2.青魚オメガ3脂肪酸の血中濃度とNバック課題(n-back test)の成績とを比較 このテーマの主任研究員であり、ピッツバーグ大学放射線学部助教授であるラジェシュ・ナランダーン(Rajesh Narendarn)に率いられたピッツバーグ大学の研究チームは、まず天然オメガ3サプリメントを6か月間摂食してくれる、様々な民族の健康な若い男女を募集。
彼らは毎月電話か外来でモニターとなってくれました。
サプリメントを摂食する前に全ての参加者を陽電子放射断層撮影装置(positron emission tomography:PET) で撮影し、同時に血液を採取、分析。
その後(参加者の)成績順を決めるワーキング・メモリー・テストを行いました。
若い成年には作動記憶能力を測る簡単な Nバック課題(n-back test.:どの数字組み合わせが1~3回前に提示されたか)をトレースしてもらいます。
モグハッダム(Moghaddam)教授によれば「彼らが提示されるNバック課題(n-back test.)の、どの課題に特別な関心があるかはオメガ3の原形質に関連がある」とのことこの意味は食事で摂取しているオメガ3がすでに彼らのワーキングメモリーに関与していることに他なりません。
FDA(米国食品医薬品局)に認可された天然魚油のオメガ3サプリメントを投与して6か月後に参加者には再び外来患者同様のアンケートに答えてもらいました。
トップグループのワーキング・メモリーが改善されていることは最終段階、ワーキングテスト中、血液採取中、いずれにおいても計測できました。
マシュー・マルドゥーン(Matthew Muldoon)助教授によれば「これまでもオメガ3脂肪酸は非常に多くの研究がなされてきましたが、病気治療中の中高年が対象であり健康な若者グループは置き去りにされていました」
「しかしながら、この研究の最終段階(最終結果)はどこなのだろうか?」
「我々は若者が究極の脳機能ポテンシャルを引き出せる健康な生活習慣を提言できるだろうか?」
その答えは(どこかで聞いたような)「Yes we absolutely can」
3.流動性知能向上の作動機能を持つのがモノアミン輸送小胞(VMAT2 protein)か オメガ3が若者にあたえる効果に焦点があてられているにかかわらず、このチームは天然オメガ3が抑制する脳機能に関する研究を継続。
これまでのげっ歯類での研究では食事よりオメガ3を除くとドーパミン(ワーキングメモリーや感情を神経に伝達する物質)蓄積が減少。
意志決定に働くたんぱく質の線条体モノアミン輸送小胞(striatal vesicular monoamine transporter type 2:VMAT2)が減ります。
それゆえ、研究者らはVMAT2タンパクの増加が流動性知能を向上させる作動機能を持つと推定。
残念ながらペット画像では結果を得られませんでした。
ナレンダーン(Narendarn)助教授によれば「天然オメガ3豊富な食事が若者の流動性知能を高めるのは本当に興味深いが、それでも画像での研究がワーキングメモリーを向上させるメカニズムを解明できなかったことはやや残念だった」
「現在モグハッダム研究所( Moghaddam lab) でやっている動物実験によれば、おそらくオメガ3に影響される脳機能は青年や若い成年と高齢者とでは異なります」
「ピッツバーグ大学チームはこれからも若いグループの流動性知能改善機能にオメガ3が与える効果を研究し続けます」とのこと。
このプロジェクトに関与した他の大学関係者は心理学部ウィリアム・フランクル(William G. Frankle)教授および放射線学部ニール・メーソン(Neal S. Mason)助教授など。
4.VMAT2(vesicular monoamine transporter 2)とは The vesicular monoamine transporter 2(モノアミン輸送小胞)はモノアミン(アミノ基が一つ)の神経伝達物質であるドーパミン、ノルピネフィリン、セロトニン、ヒスタミンなどを細胞内の細胞質基質(さいぼうしつきしつ:cellular cytosol )からシナプス小胞(synaptic vesicles)に運ぶ細胞膜結合たんぱく質。
オメガ3による作動記憶力向上にはVMAT2の関与が推定されますがまだ確証が得られていません。
“Improved Working Memory but No Effect on Striatal Vesicular Monoamine Transporter Type 2after Omega-3 Polyunsaturated Fatty Acid Supplementation”