スタジオジブリが占有する三鷹の森(都有地) 年間700万人くらいで永らく低迷していた来日観光客が今年になって増加。2500万人の目標にはほど遠いが、ひとまずは2000万人の大台乗せが予想されている。ビザ条件の緩和、円安が来日外国人増に貢献といわれるが、観光立国が出来るほどの条件が整備されたわけではありません。 最も大きなターゲットとなるべき中国の観光客は総出国者4000万人のうち来日が100万人程度(2013年)。政治問題ばかりがネックではないでしょう。たびたび取り上げてきましたが観光立国に重要な要素である宿泊、鉄道運賃、有料道路、ガソリン税、光熱費が国際的には信じられない高料金。先進国ではおそらくナンバーワン。加えて、観光インフラの一つともいえる様々な公共性の強いエンターテインメント施設の殿様商売。公共事業や公有財産を使用している公共性を持つべき私企業の独占事業は、幅広い所得層に対応した、公平で良質なサービスを提供するのが当然。一部の富裕層だけを対象にするものではありません。昨年のスカイツリーの高額入場料を筆頭に、数十万円といわれるJRの超豪華列車運行。サービス精神どころか独占の利を生かした独善的事業が目につきます。最近気なったのが宮崎駿さんのアニメをテーマにした美術館。東京都三鷹市で徳間書店のスタジオ・ジブリという私企業が経営している。立地は交通至便な井の頭公園端の緑したたる一等地。もちろん都が所有する公有地。アニメは日本が誇る現代文化。かような公有地の観光施設ならば都や三鷹市が広く企画を公募し、コンペティションにすべき。発展途上国のように政治家や行政が独断で決定すべきものではないでしょう。愛されるアニメは宮崎さんばかりではありません。コンペならばサンリオ、サンライズ、東映などいくつものプロダクションが応募するはず。複数のパビリオンがあるならともかく、1社独占では当該私企業のやり放題。マスコミに強い影響力を持つテレビ会社と政治力を持つ経営者が公有地を独占する不公平。公共事業では入札のない任意契約の弊害は明白。行政指導によるものか、入場料がそこそこなのは評価できますが、美術館運営会社の驕慢な姿勢はとてもサービス業であるべき観光施設には程遠い。
至近事例では「予定の幼児が急病で、3歳違いの小児へ変更」を申し出たらそれを拒否。どんな遠方から来る客でも、チケット変更はわずかでも認めずに警備員段階で門前払い。窓口にもたどり着けない。入場制限は混雑緩和が目的のはずだが、現場では所持チケットの変更を一切認めず払い戻しもしないという。経営者の決めたルールならば多数訪れている海外観光客も例外ではないだろう。こんな優しさの無い、硬直化した対応ができるのも独占だからこそ。担がれている宮崎さんの責任は薄いが、海外で美術館の悪評が高まれば次第に作家の評判にまで影響することは間違いないだろう。 パリでオルセー美術館が開館した当時のこと。開館後しばらくは美術館を幾重にも取り巻くほどの入館希望者の行列。帰国する日の午前中に並んでいたが、なかなか入れない。警備の婦人警官に事情を話したら窓口担当者につないでくれて即入館。警備段階で門前払いのスタジオ・ジブリとは大違い。裏口入場の議論もあろうが、臨機応変、時間が無い海外観光客を優先する優しさがフランスらしい。この姿勢が7000万人の観光客が訪問するフランスと2000万人に満たない日本との相違なのだろう。(しらす・さぶろう)